エステの契約と広告で最初に押さえる数字——「1か月・5万円」を超えると特定商取引法の対象に
エステサロンの広告というと、まず薬機法や医療広告ガイドラインが思い浮かびます。ただ、実務でつまずきやすいのはもう一つ、特定商取引法のほうです。契約の期間と金額が一定を超えると「特定継続的役務提供」に当たり、広告の書き方だけでなく、契約前後に渡す書類まで法律で決まった形が求められます。消費者庁の公表資料をもとに、最初に押さえる点を整理します。
特定継続的役務提供とは:長期・継続的な役務の提供と、それに対する高額の対価を約束する取引のこと。消費者庁は対象として、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の7つを挙げています。
まず確認する2つの数字
エステティックがこの規制の対象になるかどうかは、期間と金額で決まります。
- 期間:1か月を超えるもの
- 金額:5万円を超えるもの
回数券・コース契約・月額の継続プランなど、名前が何であれ、この2つを超えれば対象です。「単発の施術だから関係ない」と考えていた回数券が、実は対象だった、という取り違えが起きやすいところです。
一次情報は消費者庁の特定商取引法ガイドで確認できます。
- 消費者庁「特定継続的役務提供|特定商取引法ガイド」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/
広告で禁じられていること
対象になると、広告表示にも制限がかかります。消費者庁は、役務の内容などについて「著しく事実に相違する表示」や、「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止していると説明しています。
言い換えると、次のような表現は危ない側に寄ります。
- 効果の言い切り:「必ず痩せる」「シミが消える」など、結果を保証するような書き方。
- 条件を隠した価格表示:「月々◯円」とだけ見せて、総額・回数・期間・解約条件が読み取れない状態。
- 実態と離れた比較や実績:根拠のない「地域No.1」「満足度◯%」。
景品表示法の優良誤認・有利誤認と論点が重なる部分も多く、実務では両方を同時に見ることになります。
契約のときに渡す2つの書面
広告以上に見落とされやすいのが書面です。消費者庁の説明では、事業者は次の2つを渡す必要があります。
- 概要書面:契約を結ぶ前に、契約の概要を記載して渡すもの。
- 契約書面:契約の締結後に遅滞なく、契約内容を明らかにして渡すもの。
「申込書にサインをもらった」だけでは足りず、決められた事項を記した書面を、決められたタイミングで渡す必要があります。
クーリング・オフは書面を受け取った日から8日
クーリング・オフの期間は、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内です。起算点が「契約日」ではなく「法定書面を受け取った日」である点が要注意で、書面の交付が遅れたり、記載に不備があったりすると、その分だけ期間が動きます。
さらに、クーリング・オフ期間が過ぎた後も、消費者は将来に向かって契約を解除(中途解約)できるとされています。「解約不可」を前提にした案内や広告表現は、この点と衝突します。
広告文を書く前のチェック観点
エステの広告・LP・SNS投稿を用意するとき、次の順に見ると漏れが減ります。
- 契約の形を先に確認する:期間1か月超・金額5万円超に当たるか。当たるなら書面と解約まわりの表現も含めて見直す。
- 効果の表現:言い切り・保証・体験談の使い方に無理がないか(薬機法・医療広告ガイドラインの論点とも重なります)。
- 価格の表示:総額・回数・期間・追加費用・解約条件が、同じ画面で読み取れるか。
- 解約の案内:クーリング・オフや中途解約を否定する書き方になっていないか。
まとめ
エステの広告は「表現の言い換え」だけで終わらず、契約の形とセットで見る必要があります。まずは1か月・5万円の2つの数字で自社の契約が対象かどうかを確かめ、対象なら書面とクーリング・オフの説明まで含めて表示を点検するのが近道です。
公開前の原稿を貼って、問題になりやすい表現をまとめて洗い出したいときは、イイカエのような下書き段階のチェックの道具を使うのも一つの手です(適否の最終判断を代わりに行うものではありません)。
公開前の原稿、まとめて確認しませんか
イイカエは、薬機法・医療広告ガイドライン・景表法で問題になりやすい表現を洗い出し、言い換えの候補を出す道具です。いま先行リリースの案内を受け付けています。
先行リリースの案内を受け取る