「審美歯科」「◯◯専門」は名乗れるか——診療科名と肩書の広告ルール
診療科名と医師の肩書は、サイトの一番上と看板に必ず載る要素です。ここを間違えると、直すべき箇所がトップページだけでなく全ページに散らばります。しかも診療科名については、不適切な名称を広告することが罰則をもって禁じられています。厚生労働省の医療広告ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)の本文から確認します。
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
診療科名は自由に作れない
広告できる診療科名は、医療法施行令で定められたものに限られます。ガイドラインは組み立て方をこう説明しています。
①「内科」「外科」は、単独で診療科名として広告可能であるとともに、②以下の(a)身体や臓器の名称(b)患者の年齢、性別等の特性(c)診療方法の名称(d)患者の症状、疾患の名称についても、政令第3条の2第1項第1号ハに規定する事項に限り「内科」「外科」と組み合わせることによって、診療科名として広告することが可能である。
「精神科」「アレルギー科」「リウマチ科」「小児科」「皮膚科」「泌尿器科」「産婦人科」「眼科」「耳鼻いんこう科」「リハビリテーション科」「放射線科」「救急科」「病理診断科」「臨床検査科」も単独で広告でき、これらに(a)〜(d)を組み合わせることもできます。表示形式も「呼吸器内科」「肝臓・消化器外科」「内科(循環器)」の3通りが示されています。
名乗れない名称は、罰則付きで禁止されている
ここが最も実務に効きます。
法令上根拠のない名称や、組み合わせの診療科名のうち、診療内容が明瞭でないものや、医学的知見・社会通念に照らし、不適切な組み合わせである名称については、(略)これらを診療科名とすることは認められず、医療機関が当該不適切な診療科名を広告することは、法に規定する罰則をもって禁止されている。
そして、認められない名称が具体的に挙げられています。
◎医科に関係する名称
「呼吸器科」、「循環器科」、「消化器科」、「女性科」、「老年科」、「化学療法科」、「疼痛緩和科」、「ペインクリニック科」、「糖尿病科」、「性感染症科」など
◎歯科に関係する名称
「インプラント科」、「審美歯科」など
美容・自由診療の現場でよく見かける「審美歯科」「インプラント科」は、診療科名としては認められていません。「ペインクリニック科」も同様です(「ペインクリニック内科」「ペインクリニック外科」は組み合わせとして例示されています)。加えて、次の注意も付いています。
なお、これら法令に根拠のない名称と診療科名とを組み合わせた場合であっても、その広告は認められない。
不合理な組み合わせも省令で決まっている
組み合わせ方にも禁止のリストがあります。省令に規定されているもので、例えば次のような対応です。
- 内科 × 整形、形成
- 外科 × 心療
- 小児科 × 小児、老人、老年、高齢者
- 産婦人科 × 男性、小児、児童
- 皮膚科 × 呼吸器、消化器、循環器、心臓、脳 など
「なんとなく意味が通る」ではなく、規定されている組み合わせかどうかで判断する必要があります。
昔から使っている科名の扱い
平成20年の改正で広告できなくなった科名については、経過措置があります。
平成20年改正以前に広告可能と認められていた診療科名のうち、改正により広告することが認められなくなった以下の診療科名については、看板の書き換え等、広告の変更を行わない限り、引き続き、広告することが認められる。
「神経科」、「呼吸器科」、「消化器科」、「胃腸科」、「循環器科」、「皮膚泌尿器科」、「性病科」、「こう門科」、「気管食道科」
条件は「広告の変更を行わない限り」です。サイトをリニューアルする場面でこの科名を引き継ぐかどうかは、慎重に検討したほうが安全です。
なお、1人あたりの主たる診療科名は原則2つ以内とし、大きく表示して他と区別することが望ましい、という記載もあります。
肩書:専門医・認定医は書ける範囲が決まっている
医療従事者について広告できるのは、氏名・年齢・性別・役職・略歴と、届出のある団体による専門性の認定を受けた旨です。専門性の資格については、専門医機構の基本領域のものに加えて、次の範囲が示されています。
「広告が可能な医師等の専門性に関する資格名等について」(平成 19 年6月 18 日付医政総発 0618001 号医政局総務課長通知)において広告が可能となっている医師 58 団体 56 資格、歯科医師5団体5資格については、一定の場合を除き、当分の間、令和3年 10 月 1 日の広告告示改正前と同様に広告することができるものであり、令和3年 10 月1日以降に新たに学会より認定された者も同様であること。
つまり、学会や団体が独自に出している資格であれば何でも書けるわけではありません。医療従事者の範囲についても線が引かれています。
氏名、年齢、性別等が広告可能となる医療従事者とは、法律により厚生労働大臣又は都道府県知事の免許を受けた医療従事者とし、民間資格の取得者、免許を取得していない者又は免許停止の処分を受けている期間中である者については、広告できない。
略歴に資格を書くことはできない
見落とされやすいのがここです。略歴として書けるものが具体的に定められていて、その最後にこう書かれています。
記載する事項は、社会的な評価を受けている客観的な事実であってその正否について容易に確認できるものであり、専門医や認定医等の資格の取得等は含まれない。
専門医・認定医は「専門性に関する認定を受けた旨」として別枠で広告できるものであって、経歴欄に並べて書く扱いにはなっていません。研修歴についても、広告可能な事項とはされていないと明記されています。
非常勤の医師の見せ方
非常勤の医療従事者については、常時勤務する者と誤解を与えないよう、非常勤である旨や勤務する日時(例えば、「火曜と木曜の午後」等)を示せば差し支えないものとすること。常時勤務する者以外について、常時勤務している者であるかのように誤認を与える広告については、誇大広告として取り扱うことが適当である。
著名な医師を非常勤で招いている場合、勤務日を書かずに医師紹介ページへ並べる作りは誇大広告として扱われる可能性があります。
点検の順番
- 科名が政令の枠内か:「審美歯科」「インプラント科」「ペインクリニック科」「糖尿病科」などは不可。
- 組み合わせが規定のものか:内科×整形、産婦人科×男性のような不合理な組み合わせは禁止。
- 古い科名を引き継いでいないか:経過措置の条件は「広告の変更を行わない限り」。
- 肩書の資格が広告可能な範囲か:専門医機構の基本領域か、届出のある団体の資格か。
- 略歴に専門医・認定医・研修歴を書いていないか:略歴の範囲に含まれない。
- 非常勤の医師に勤務日を添えているか。
まとめ
診療科名は「分かりやすければよい」ではなく、政令と省令の枠の中で組み立てるものです。そして肩書は、書ける資格の範囲と、書ける欄の両方が決まっています。サイト全体に散らばる要素なので、文言を直す前に一覧を作って突き合わせるのが早道です。
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