その効果、15日で根拠を出せますか——不実証広告規制という前提条件

公開 2026-07-26|更新 2026-07-26

広告の表現をどう書くかという話の手前に、「その表現の根拠を、求められたら何日で出せるか」という条件があります。景品表示法第7条第2項の不実証広告規制です。効果や性能をうたう表示については、行政が「実際と違う」と立証しなくても、事業者が期限内に根拠資料を出せなければ不当表示とみなされます。

痩身、脱毛、若返りといった自由診療・エステの表示は、この規定がまさに想定している領域です。運用の考え方は消費者庁の指針に書かれているので、原文で確認します。

仕組み:出せなければ「みなされる」

まず、この規定が何をするものかです。

一方、消費者庁長官は、景品表示法第7条第2項により、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、消費者庁が当該表示について実際のものとは異なるものであること等の具体的な立証を行うまでもなく、当該表示は景品表示法第5条第1号に該当する表示とみなされることになり、景品表示法第7条第2項は、このような法律効果を発生させるものである。

通常の優良誤認表示の摘発では、行政の側が「実際はそうではない」と立証する必要があります。不実証広告規制はその立証を省いて、資料の不提出をもって優良誤認表示(景表法第5条第1号)とみなす仕組みです。措置命令や、No.1表示と痩身効果で課徴金が課された事例のような課徴金納付命令は、この先にあります。

なぜ痩身や美容の効果表示が直撃するのか

対象が効果・性能の表示に絞られている理由も、指針に書かれています。

他方、商品・サービスの内容に関する表示の中でも、痩身効果、空気清浄機能等のような効果、性能に関する表示については、契約書等の取引上の書類や商品そのもの等の情報を確認することだけでは、実際に表示されたとおりの効果、性能があるか否かを客観的に判断することは困難である。

原材料や容量なら書類で確かめられますが、痩身効果は確かめられない。だからこそ、確かめる負担を事業者側の資料提出に移した——という構造です。痩身効果は、この規定の説明のなかで名指しで出てくる例のひとつです。指針が挙げる過去の対象表示例にも、痩身効果を標ぼうする美容サービスや痩身をうたう茶、ニキビ除去効果をうたう化粧品が並んでいます。

期限は原則15日、しかも「これから試験します」は通らない

実務で一番効いてくるのがここです。

表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出期限は、消費者庁長官が、前記1の文書により当該資料の提出を求めた日から、原則として15日後である(不当景品類及び不当表示防止法施行規則(平成28年内閣府令第6号)第7条第2項)。

資料提出の要請は文書で行われ、その文書には次の事項が具体的かつ明確に記載されます。

① 当該事業者がした当該表示内容

② 資料の提出先及び提出期限

延長の余地はありますが、認められる理由は限られます。

なお、具体的にどのような理由であれば、正当な事由と認められるかは、個別の事案ごとに判断されることになるが、新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があるなどの理由は、正当な事由とは認められない。

「求められてから試験を組む」という段取りは、正面から否定されています。裏返せば、根拠は表示を出す前に手元にあることが前提です。指針もそう書いています。

商品・サービスの効果、性能の著しい優良性を示す表示は、一般消費者に対して強い訴求力を有し、顧客誘引効果が高いものであることから、そのような表示を行う事業者は、当該表示内容を裏付ける合理的な根拠をあらかじめ有しているべきである。

つまり15日という期限は、資料を作る時間ではなく、既にあるものを取りまとめて出す時間です。

「合理的な根拠」の2要件

提出した資料が合理的な根拠と認められるための要件は2つです。

① 提出資料が客観的に実証された内容のものであること

② 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

論文や試験結果を持っていても、①だけでは足りません。②の対応関係で落ちる例が指針に並んでいます。

要件①:客観的に実証された内容とは

該当するのは次のいずれかです。

① 試験・調査によって得られた結果

② 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献

試験・調査を根拠にする場合、方法に条件が付きます。

試験・調査によって得られた結果を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合、当該試験・調査の方法は、表示された商品・サービスの効果、性能に関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施する必要がある。

一般に認められた方法が存在しない分野では、社会通念上および経験則上妥当と認められる方法で実施する必要があるとされています。なお、第三者機関でなければならないわけではありません。

試験・調査を行った機関が商品・サービスの効果、性能に関する表示を行った事業者とは関係のない第三者(例えば、国公立の試験研究機関等の公的機関、中立的な立場で調査、研究を行う民間機関等)である場合には、一般的に、その試験・調査は、客観的なものであると考えられるが、上記ア又はイの方法で実施されている限り、当該事業者(その関係機関を含む。)が行った試験・調査であっても、当該表示の裏付けとなる根拠として提出することも可能である。

自院で実施した調査でも、方法が上記の条件を満たしていれば根拠として提出できます。判定を分けるのは実施主体よりも方法です。

専門家の見解や学術文献を出す場合は、その分野で一般的に認められているものである必要があります。

特定の専門家等による特異な見解である場合、又は画期的な効果、性能等、新しい分野であって専門家等が存在しない場合等当該商品・サービス又は表示された効果、性能に関連する専門分野において一般的には認められていない場合には、その専門家等の見解又は学術文献は客観的に実証されたものとは認められない。

「最新の術式なので前例がない」という説明は、根拠が無いことの説明にしかなりません。その場合は自ら試験・調査で実証する必要がある、と指針は続けています。

体験談は根拠にならない

自由診療・エステの広告でもっとも頻出する材料が、ここで正面から扱われています。

なお、一部の商品・サービスの効果、性能に関する表示には、消費者の体験談やモニターの意見等を表示の裏付けとなる根拠にしているとみられるものもあるが、これら消費者の体験談やモニターの意見等の実例を収集した調査結果を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合には、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されている必要がある。

体験談そのものが禁止されているのではなく、根拠として通るには統計的な客観性が要る、という書き方です。そして通らない例が具体的に挙がっています。

自社の従業員又はその家族等、販売する商品・サービスに利害関係を有するものの体験談を収集して行う調査は、サンプルの抽出過程において作為的な要素を含んでおり、自社に都合の良い結果となりがちであることから、統計的に客観性が確保されたものとはいえず、客観的に実証されたものとは認められない。

積極的に体験談を送付してくる利用者は、一般に、商品・サービスの効果、性能に著しく心理的な感銘を受けていることが予想され、その意見は、主観的なものとなりがちなところ、体験談を送付しなかった利用者の意見を調査することなく、一部の利用者から寄せられた体験談のみをサンプル母体とする調査は、無作為なサンプル抽出がなされた統計的に客観性が確保されたものとはいえず、客観的に実証されたものとは認められない。

現場で集まる体験談は、ほぼ例外なく後者です。満足した人が書いて送ってくるものだけを集めた集合は、無作為抽出になっていません。広い地域で売る商品について一部地域の少数モニターで行った統計調査も、サンプル数が十分でないとして同様に扱われています。

医療機関のウェブサイトでは、そもそも体験談の掲載自体が医療広告ガイドラインで禁じられています(体験談とビフォーアフター写真の記事で扱いました)。景表法側でも根拠として使えないため、体験談は「載せられないうえに根拠にもならない」という二重の位置づけになります。

要件②:表示と実証内容が対応していること

資料自体が立派でも、表示との対応がずれていれば根拠になりません。判定の視野についての注記が重要です。

なお、ここで表示された効果、性能とは、文章、写真、試験結果等から引用された数値、イメージ図、消費者の体験談等を含めた表示全体から一般消費者が認識する効果、性能であることに留意する必要がある。

見出しだけでも、注釈だけでもなく、写真やイメージ図や体験談を含めたページ全体から一般消費者が受け取る効果が、対応関係の判定対象です。指針の例を2つ引きます。

99%の紫外線をカットすると表示する紫外線遮断素材を使用した衣料について、事業者から、当該化学繊維の紫外線遮断効果についての学術文献が提出された。

しかしながら、当該学術文献は、当該紫外線遮断素材が紫外線を50%遮断することを確認したものにすぎず、紫外線を99%遮断することまで実証するものではなかった。

数値を大きく寄せた表示は、実証された数値との差でそのまま落ちます。もう1つは、より広告の作り方に踏み込んだ例です。ダイエット食品について、次の2つが組み合わされた事案が挙げられています。

「食べるだけで1か月に5kg痩せます」

「○○大学△△医学博士の試験で効果は実証済み」

指針は、この見出しに専門家による評価があることを表示することを加えた表示全体として、食べるだけで1か月に5kgの減量効果が期待できるとの認識を一般消費者に与えるものと整理しています。事業者からは、美容痩身に関する専門家の見解が提出されました。

しかしながら、当該専門家の見解は、当該食品に含まれる主成分の含有量、一般的な摂取方法及び適度の運動によって脂肪燃焼を促進する効果が期待できることについて確認したものにすぎず、食べるだけで1か月に5kgの減量効果が得られることを実証するものではなかった。

専門家の見解は本物で、内容も客観的でした。落ちたのは、見解が「適度の運動によって」と条件を置いているのに、表示は「食べるだけで」と条件を外していた点です。同じずれ方は美容医療でも起きます。食事管理や複数回の施術を前提としたデータを、前提を書かずに1回あたりの効果として見せれば、対応していないと判断され得ます。

指針にはもう1例、家庭用害虫駆除器について、アクリルケース内で一時的な回避行動を確認しただけの試験結果では、通常の居住環境における実用的な効果を実証したことにならないとされた例も挙げられています。試験条件と実際の使用条件がずれているパターンです。

「開運」「気分爽快」のような表現も対象になり得る

数値を出していなければ安全、というわけでもありません。

また、商品・サービスの効果、性能に関する表示であって、神秘的内容(「開運」、「金運」等)、主観的内容(「気分爽快」等)、抽象的内容(「健康になる」等)に関する表示であっても、当該表示が一般消費者にとって、当該商品・サービス選択に際しての重要な判断基準となっていると考えられ、さらに、これらの表示内容に加えて具体的かつ著しい便益が主張されている(暗示されている場合も含む。)など、当該商品・サービスの内容について、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良との認識を与えるようなものであれば、景品表示法第5条第1号に該当するおそれがあり、そのような場合には、景品表示法第7条第2項に基づき表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求める対象となり得る。

抽象的な言い回しに逃げても、周辺で具体的かつ著しい便益を主張していれば——暗示も含めて——対象になり得ます。逆に、抽象的な表現だけで著しい優良性を認識させないものは対象にならないとされています。分かれ目は語の抽象度ではなく、ページ全体で何を約束しているかです。

書く前にそろえておく順番

まとめ

不実証広告規制は、表現の是非を争う前に「根拠を持っているか」を問う規定です。期限は原則15日、新たな試験を始める必要があるという理由での延長は認められず、体験談は統計的な客観性がない限り根拠になりません。そして判定は表示全体から受け取られる効果に対して行われます。

効果をうたう文言を1つ増やすことは、根拠資料を1つ持つ約束をすることでもあります。書く前に対応表を作っておけば、15日という期限は資料を探す期間ではなく、送る手続きの期間になります。

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この記事は公表資料をもとにした一般的な情報の整理です。個別の広告表現が法令に適合するかどうかの判断ではありません。 最終的な適否は、専門家や所轄の窓口にご確認ください。

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